日本で最も有名なアニメの一つである『サザエさん』について、「登場人物の表情がいつも一緒だ」と思ったことはないでしょうか。それもそのはず、サザエさんのアニメは毎週絵を新たに描き下ろすのではなく、すでにあるイラストをトレース(透かしてなぞること)した絵を組み合わせて描いているそうです。
先日あるテレビ番組でこの話を知ったとき、私はずっと不思議に思っていた疑問が解決しました。以前から、「なぜサザエさんのアニメには、命がこもっていないのだろう」と思っていたのです。
素敵な絵を描くコツは「生きた線を描く」ということです。漫画では生き生きとした線を描くために、あえて線の太さが変わる不安定なペンを使うことが多々あります。逆を言えば、生き生きとした線を描くためには、かたちの正確さは犠牲にしなければならないということでもあります。『サザエさん』の原作者である長谷川町子の絵は、大変荒っぽいタッチでありながら、実に生き生きしていました。逆にアニメ『サザエさん』の絵は、生命力よりも正確さを優先した、ということなのでしょう。
今月は、私たちの幼稚園の運動会が企画されています。感染症に注意を払いつつ、子どもたちが楽しみながらも一生懸命練習を重ねて本番に挑みます。大人から見れば、ハラハラするようなことも多々あるかもしれません。「ウチの子だけよそ見をしている!」「あぁ、また失敗した…」目につくこと、気になることもあることでしょう。
しかし大切なのは、整った演技をすることではなく、生き生きと練習の成果を発揮することなのです。今日はすごく楽しかった、またやりたい!と子どもたちが思えるような運動会にするためには、どれだけ整った演技が出来たかではなく、みんなが生き生きと過ごせたかを大事にするべきであると思います。
コロナウイルスの影響によって、人数や種目に制限をかけなければいけない状況下での運動会です。しかしその中で、精いっぱい楽しむ子どもたちの姿を、分かち合うことが出来ればと願っています。
📖聖句
「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。」 詩編133編
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